FTMの彼氏彼女の悩み～カミングアウトや子供を持つ方法

あなたは「FTM彼女」という言葉をご存知ですか？

「FTM彼女」のFTMとは、Female to Maleの略で、性同一性障害（⼼と⾝体の性別に違和感を覚えている）の人を指します。
「FTM彼女」とは、つまり、男性から⼥性に性別を変えたいと思っている「⼥性」のこと。現状の性別は「⼥性」ですが、⼼は「男性」です。恋愛や性的な対象は「女性」になるわけです。
よって、「FTM彼女」は、他者から見れば「彼女=女性」ですが、付き合っている女性にとっては「彼⽒」ということになります。

中には、男性ホルモンを投与している人もおり、その場合は声も低く、ヒゲが生えているため外見は男性そのものという人もいます。

男性や女性の垣根を越えて愛し合っているFTMカップルも多いです。また、FTMカップルも普通のカップルと同じように恋愛で悩むこともありますが、少し違うのは、「FTM彼女」への接し方の悩み、FTMのカミングアウトに関する悩み、結婚や子供に関する悩みなどがあります。

FTMカップルには一体どんな悩みがあるのか？　ご紹介します。

「FTM彼女」とは、前述しましたが、少々、ややこしいので、再度ご説明します。

まず、FTMを簡単に説明すると女性の身体で産まれてきましたが「心」は男性ということです。さらに、FTMは「性同一障害=GID」と言い女性から男性への移行を望んでいる人のことを指します。
つまり、FTM彼女は「元々は女性だった人が彼氏」ということになります。

また、FTMで、男性ホルモン投与や性転換手術などをしている場合、心だけでなく外見的にも男性のため「元々は女だった」などどカミングアウトされるまで気づかれないこともあります。こういった場合、他人から見れば男女の普通のカップルに見えるわけです。

では、「FTM彼女」とラブラブで仲良く付き合っていくにはどうすればいいのでしょうか？

FTM彼女と仲良く付き合っていくためには、いくつかのポイントがあります。

・男性ホルモン投与などにより外見は男性になっても、生まれ持った男性の身体（機能）にはなれないことを理解しましょう

・悩みごとや不安なことなどあればFTM彼女に相談し頼りましょう

・FTＭ彼女をお互いの友人や両親、兄弟に紹介し理解してもらい良き理解者を作りましょう

・「大事なことは2人が幸せであること」を信念に持ちましょう

このポイントを理解することが、FTM彼女と仲良く付き合っていくための秘訣です。

恋愛の悩みは誰しもあることですがFTMカップルにも様々な恋の悩みがあります。
例えば、「FTM彼女」が浮気をしていることがあります。浮気の要因として男性ホルモン投与の影響が関係しているのだそうです。男性ホルモンを投与すると、まるで思春期の少年のように性欲が強くなるFTＭ彼女もいて、様々な女性とセックスしたくなり浮気をしてしまうケースがあるそうです。

そしてもう一つ、「FTM彼女」とのセックスに関する悩みは多く、「FTM彼女」が性別適合手術を受け、陰嚢（睾丸）と陰茎を形成しても、生まれ持った男性のペニスとは異なるため「気持ち良くない」「手や口ばかりで不満を覚える」」と感じてしまう彼女もいるそうです。

また、「FTＭ彼女」自身も友人や家族などに「自分は彼氏として、女性と付き合っている」ことを打ち明けることができずに悩んでいる人もいます。

FTMであることをカミングアウトすることはとても勇気がいることで、実際、FTMであることをなかなか打ち明けることができない人も多いようです。しかし、家族や兄弟、付き合っている彼女などにいつかはカミングアウトしないといけませんよね？　では、どのようにしてFTMであることを伝えるのでしょうか？

今回はFTMであることをカミングアウトした2人の体験談をご紹介します。

～FTMのA君：交際中の女性にカミングアウトした体験談～

声も低くヒゲも生え、どこから見ても男性のFTMであるＡ君は知人の紹介で、ある女性と知り合いFTMであることは隠したまま交際がスタートしました。
2人は何度もデートを重ねて楽しい時間を過ごしましたが、FTMのＡ君は本当のことを知らない彼女に対して後ろめたさを感じ「今日こそはFTMのことを彼女に言おう」と何度も思ったそうですが、結局、振られるのが怖く言い出せないまま、交際は続きました。

交際して１ヶ月後、FTMのＡ君の家に彼女が遊びに来て2人はいい雰囲気になりセックスしそうになったそうですが、そこでFTMのＡ君は彼女にカミングアウトしました。彼女は泣き「突然のことで頭が混乱しているから時間が欲しい」と言い残し彼女は帰りました。そして、後日彼女からFTMのＡ君の元に連絡があり「Ａ君のことは嫌いじゃないけど将来は子供が欲しいし、このまま付き合っていくのは難しい」と言われ振られてしまったそうです。

しかしその後、FTMのＡ君はどうしても彼女のことが忘れられずデートに誘ったところ、彼女はOKでした。ご飯を食べに行き2人で写真を撮ったりするなど、まるでカップルのようだったそうですが、手を繋いだりキスしたりすることはなく少し距離感のあるデートだったと言っています。
このような関係が5ヶ月程経過したある時......

FTMのＡ君は彼女との時間を楽しみ何度も合う回数が増えるにつれ、手を繋いだりキスしたりとカップルらしい出来事が増えていき、自然な流れで再び付き合うことになりました。

交際前にカミングアウトしていればこのような結果になっていなかったかもしれないですが、FTMのＡ君は「どんな結果であれ恋愛に性別は関係ない」と言っています。FTMのＡ君と彼女は今でも順調に交際が続いているそうです。

～FTMのＢ君：交際中の彼女の両親にカミングアウトした体験談～

FTMのＢ君は何人かと交際してきましたが、その中で2人の彼女の両親にFTMであることを伝えたそうです。
1人目は高校1年生～2年生の時に1年程交際していた彼女で、友達だった頃から仲が良くお互いの家に泊まる程でした。交際がスタートしてからは、さらに泊まる頻度が多くなりました。
そしてある時、FTMのＢ君が彼女にあげたラブレターを彼女の母親が見つけてしまいFTMであることがバレてしまったそうです。
その後、彼女の両親から交際を大反対され、FTMのＢ君が彼女に対する想いを一生懸命に伝えても彼女の両親の理解を得ることができなくて交際は終わってしまいました。

2人目は高校3年生の時に交際していた彼女との体験談です。
高校3年生になると学ランで登校していたため、学校中にFTMであることが知れ渡っていました。そのため、FTMのＢ君と交際している彼女も付き合う前からB君がFTMであることを知っていたそうです。
そして彼女は、両親以外に兄弟にも「私FTMの人と付き合っているけどどう思う？」と質問したところ「別にいいんじゃないの？　FTMだからと言って反対するのはおかしいでしょ？」と交際に全く反対されなかったそうです。

交際前にFTMだと言うか？　言わない？　によって、その後の2人の関係性が変わってきますし、交際している以上セックスの問題もでてくるためFTMであることを隠し通すのは難しいです。
また、結婚を考えている場合は彼女の両親にカミングアウトしないといけません。結婚は両家が家族になることでもあるため、「FTM彼女」の家族である両親や兄弟の理解がなくては幸せな結婚はできません。

FTMであることをカミングアウトする方法はたくさんありますが、「FTMであることをカミングアウトするのはタイミングが大事」だということを体験談から読み取っていただけたのでは無いでしょうか。

様々な困難を乗り越え愛する彼女と結婚したFTMカップルがいますが、次に望むことと言えば「子供を授かる」ことではないでしょうか？　FTMであっても妊娠し自分達の子供を持つことができるのでしょうか？

実は近年、人工授精などで妊娠したFTMカップルが増えてきていることを知っていますか？　
ここからは人工授精などのことや妊娠したFTMカップルの体験談について、ご紹介します。

FTMが自分の子供を授かる方法として一般的なのは人工授精です。
人工授精には2種類あり「AIH(配偶者人工授精)」と「AID(非配偶者人工授精)」がありFTＭの場合、後者の「AID(非配偶者人工授精)」で妊娠を試みます。

簡単に「AIH(配偶者人工授精)」と「AID(非配偶者人工授精)」の違いを説明すると、「AIH(配偶者人工授精)」は夫の精子を使いますが、「AID(非配偶者人工授精)」は第三者から精子提供してもらい妻の卵子と人工授精します。

そして、人工授精や体外受精、顕微鏡受精の3種類の中でも最も妊娠率が低いのは、人工授精だと言われていますが妊娠成功率は4回までで90％以上もあるため、FTMカップルであっても子供を持てるチャンスがあります。

養子ではなく妊娠して子供を授かりたいと思っているFTMカップルにとっては、費用問題は避けて通れません。それでも妊娠して自分達の子供が欲しいと願っているFTMカップルは、実際、とても多いのが現状です。

FTMカップルが人工授精をするとなれば費用はどれくらいかかるのでしょうか？　
人工授精の一回あたりの費用は約2万円～3万円で、4回トライした場合は約8万円～12万円かかります。

FTMカップルが妊娠して子供を持つにあたり必要不可欠なのが精子です。
FTMカップルの場合「AID(非配偶者人工授精)」のため第三者から精子提供してもらい人工授精を試みます。そのため、誰から精子提供してもらうか？　という問題に直面します。
第三者から精子提供してもらう場合の選択肢は2つで「血縁関係のない他人」か「血縁関係のある人間」です。

「血縁関係のない他人」を選択した場合、FTMカップルには精子提供してくれた人の情報などは一切教えてくれません。そして精子提供した男性も同様です。精子提供する際にはFTM夫の血液型のみでマッチングして決めます。
「血縁関係のある人間」が精子提供してくれた場合は「血縁関係のない他人」と違い、安心感はありますが容姿が似てくること以外に趣味や好みなども似てくることがあるそうです。
ここで体験談をご紹介します。

～FTMのＣさん：妻さおりさんの妊娠までの道のり～

FTMのＣさんはアメリカへ渡り卵子を採取し、精子バンクを通じて受精した卵子を凍結しています。
その後、妻さおりさんと結婚し、さおりさんの子宮に受精卵を移植しましたが妊娠できなかったため、「AID(非配偶者人工授精)」第三者による精子提供で無事に妊娠し出産をしました。

しかし、FTMのＣさんや妻さおりさんは、無事に産まれてきてくれた我が子は宝物と大変喜んでいる反面、FTMの子供ということに不安もあるそうです。でも、今は産まれてきてくれた我が子に愛情をたくさん注いで子育てを頑張っているそうです。

FTMの間に産まれてきた子供の親子関係はどうなるのでしょうか？
以前は「AID(非配偶者人工授精)」で産まれてきた子供の親子関係は法律上認められていませんでした。しかし、2013年12月にFTMのパートナーである妻が産んだ子供は夫の子供として、最高裁において親子関係が認められています。
最高裁は、一般の夫と同じように「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する」という民法が適用されるという画期的な判決を下しました。

環境が整っていけば、以前よりも人工授精による妊娠を希望するFTMカップルが増えていくかもしれません。

「FTM彼女」は、元々は女性として産まれたものの、男性として生きていく人生をえらびました。彼らは、一番近くにいて愛している存在である彼女から、男性として頼られたり、どんなことがあっても2人が一緒にいられることを何よりの幸せと感じています。

多くの困難が立ちはだかることでしょうが、FTMを彼氏として選び、交際していく上で大事なことは「性同一障害」と「男性」であることをよく理解することです。この2つが理解できない彼女の場合、FTMと交際するのは難しいです。

良き理解者でもあり良きパートナーであることこそFTMが望んでいる彼女です。

FTMカップルが抱える悩みは様々ですが、FTMの彼女として交際し結婚、そして、出産と幸せを育んでいるFTMカップルもいます。まだまだ理解されていないことも多々ありますが、2人で困難を乗り越えて幸せになりましょう。

自分らしさを忘れない事が人生において大事といえるでしょう。